2006年10月21日・馬瀬中央公民館にて
馬瀬川フィッシングアカデミー講演会
清流馬瀬川の現状と将来!
近年の河川環境の悪化は、あまご釣り、鮎釣りで名高い馬瀬川にもおよんでいます。今、馬瀬川に何が起きているのか?全国の河川をプロの目で見てきた日本プロ友釣り協会。「美しい日本、守ろう清流」をスローガンに河川環境保護の活動を展開するこの団体から、馬瀬川をよく知り危機感をもつお二人を招き、自然環境復活への方策を探りました。
  講演者の意図を正確に伝えるために、
発言要旨は講師と打ち合わせの上、加筆修正しています
天野勝利
あまの・かつとし

馬瀬川フィッシング
アカデミー顧問
JPA日本プロ友釣り協会会長代行
益田川で産湯につかり馬瀬川に通いつめ50余年。鮎釣り以外にも渓流魚 もこなし、本流テンカラ師として知られ、メディアに数多く登場する。 シーズン中は全国の川を駆け巡る。今や下呂市の財産となった清流馬瀬 川を守る手伝いをしたい、と願っている。 馬瀬川フィッシングアカデミーは創設時より関わった。下呂市萩原町在住。


ずっと昔から川に関わって生きてきた。国内はもちろん、 外国にも足を伸ばす。外国の話をすると、まずニュージー ランド。この国は自然保護や環境に対して厳しく、川には 構造物がほとんどない。日本の釣りとは違い、釣果をあげ るより釣りを楽しむことを重要視している。エサ釣りはも ちろん禁止で、特にオモリに鉛を使うことは、水中に重金 属を溶かすことになるので禁止されている。フライ・ルア ーが中心となり、仕掛け作りから楽しむ。日本から持ち込 むウェーダーでさえ、植物検疫を受けてからでないと使わ せない。これが、現在多くの観光客が訪れる自然豊かな国 のやり方。お隣の韓国にも天然鮎を求めて行ったが、河川 環境がそのまま残り自然の浄化作用が生きていて、水温は 高いが透明度がよくきれいな水である。海産遡上鮎を友釣 りで楽しむことができる。



  馬瀬川の話。ここ数年、特に馬瀬川に元気がないという話を聞く。昔は人も魚も自然も全国一と誇れた。馬瀬川の鮎は頭小さく幅広で、ぬめりがあり、香り高き鮎だった。今は違う。河川工事もあり人工林も増え、自然のダム湖である山も変わった。環境面では国の指導もあり各家庭の下水 処理も進んだが、昔の自然には戻らない。林道建設や、道路脇の側溝が一気に川に雨水をたれ流す。これが大水そし て災害を招き次は工事の悪循環だ。一昨年の台風のため昨年は河川状況が悪く、今年は早く放流そして解禁したが裏 目に出た気がする。4月22日、アカデミー講座の際に数河で鮎の放流を見た。水温たったの7.5度。翌日惣島で釣っ ていたらその鮎が既に流れて下ってきてた。この時の鮎は果たして残ったのだろうか?状況に応じた機動的な放流は できないのだろうか?鮎の一生は一年である。いわゆる年魚なので。その分ちょっとした自然の変化にも敏感。自然河川なら自然が調整してくれるが、100%放流の馬瀬川では、人間が自然をよく観察して手を加えてあげなければならない。

馬瀬川の生き残り策について。アマゴについては、天然保護のため、全河川に成魚放流するのはやめるべきだ。馬瀬川には多くの禁猟区の支流があり、天然を育てる力がある。ゾーニング(区分分け)により天然魚が支流から下ってくる。天然のアマゴを釣りたいお客も多い。養殖でもよいという方には、西村〜岩屋ダム間に入れ、人工放流の漁場を設定したらよい。今、西村ダムの水が飛騨川へ、飛騨川の水が岩屋ダムに流れているが、川の水を入れ替えるのは生態系にとってもおかしい。馬瀬川の水は馬瀬を流れるべき。

他の河川の例を述べる。宮川を訪ねると一昨年の台風の復旧工事のすさまじさが目に付く。ダムが多すぎる。馬瀬川はまだまだ上流部に広葉樹が残っているから被害が軽微だったのではないか。また、多摩川上流の小菅川は組合が馬瀬よりもっと小さいが、河川の有効利用やキャッチ&リリース区の設定で成功している。

河川法も治水・利水から環境重視に変わった。全世界が21世紀は環境の時代と言っている。これを活かせばよい。そして馬瀬川の鮎、品のある鮎は何なのか、もう一度探ればよい。大鮎は益田川にまかせるとか。釣り人しか川に興味がないように見える今日、漁協の責任が非常に重いことを自覚して欲しい。
清流馬瀬川の現状と将来!
吉川賞治
よしかわ・しょうじ

下伊那漁業協同組合副組合長
JPA日本プロ友釣り協会会長
天野氏と共に、JPA日本プロ友釣り協会創設時から関わる鮎釣り界の重鎮。馬瀬川フィッシングアカデミー・鮎友釣り中級編講座では数年来に渡り中級鮎釣り師のステップアップのための講師を務める。 冷水病問題により、湖産鮎が問題視されている中、組合経営の難しさ、鮎選択のポイント等を中心に語った。長野県飯田市在住。


組合経営についていうと、主な収入面では、入漁料と組合員賦課金、そして補償金が柱になる。入漁料の中では天候等による日釣券の上下が激しく影響が大きい。自分の組合では友釣り終了は9月末とし、収入計画を立てる。下伊那漁協では本年度は6月の2週目の土曜日で、多くの河川が解禁した翌週に設定した。管内には5つの支流と本流があり、解禁当初は支流で釣れ、7月下旬に本流と、シーズン通じて釣れるように工夫している。

寒狭川、馬瀬川などは元々湖産で売っている川。湖産は冷水病菌を保菌している確率が高いのが問題だ。釣れる川なら人は来る。矢作川上流部の例を挙げると、昨年長野産の鮎を入れたので調査に行った。徹底的に無菌のオトリを使い、引き舟、オトリ缶、タイツ等を消毒した。その年は冷水病も発生しなく、とてもよく釣れた。たった300キロの放流だが、一日50〜60尾は連日釣れた。一匹10グラム平均で3万匹いたとしても、放流量の80%位は釣ってしまったのではないかと思う。宣伝をしなかったが、口コミで本年は人が多く入りよく釣れた。量を入れるのもよいが、組合は少なくてもいいから滞留率の高い良質の鮎を入れることが肝心。



  馬瀬に二十数年前に初めて来た時は、なんてきれいな川だろうと思った。昔は今より放流量も少なく、全部湖産で、よく釣れた。何が変わったかというと冷水病菌を保菌している鮎が入っているので、発生したときにはあまり釣れないこと。湖産鮎100%の川を探し、安曇川(あどがわ、滋賀県高島市)を訪ねた。この川は琵琶湖につながっている。鮎はとても多く、どんどん掛かる。オトリをつけて出す先から掛かる。驚いたのは、7月半ばまでにいた鮎が一度冷水病で流れてしまったのだが、その後水温が上昇した時に、新しく遡上してきた鮎により補充されたそうだ。驚いたことはまだ他にもある。8月の渇水期には1kmほど水が伏流し切れてしまい、残った鮎は鳥に食べられたりするのだと思うが、また秋口に水が通ると琵琶湖から鮎が産卵のために遡上して来ること。遡上して産卵するなんて、サケのことだと思っていた。鮎の生態についてはまだまだ知らないことがあるものだ。それから、ここの組合長には鮎にもランクがあるということを教えられた。彼は昔うちの組合に鮎の配達に来ていたそうで、私の組合では劣ったランクの鮎を入れたことがあるそうだ。買い付け担当が値切って、結果としてあまり良くないものになってしまったらしい。どんな鮎がいるのか、自ら現場について行って確認することが大切だと思う。

それから、意識して欲しいのは、冷水病は釣り人も移すということ。オトリを持って別の河川に行けばそれだけで病気を持ち込むことになる。少量でも関係ない。冷水病について言うと、菌を殺すには28度から30度位の加温が必要。養殖業者は13〜14度で飼っており、病気のなかった昔ならともかく、馬瀬川で7.5度の水温で放流するのはまずいと思う。下伊那漁協では水温が12度にならないと放流しない。

東京は一番早く川を汚し、でも一番早くきれいに戻した。今は地方が遅れている状態。フィッシングアカデミーやNPOがごみそうじを呼びかけているが、カンカン拾って問題解決するなら簡単。それより鮎が釣れるようにするためには、私達がいくら言っても、最終的には地元の組合長そして組合員が真剣に取り組まないとできない。馬瀬にもおいしいトマトなど農産品特産物がいっぱいある。釣り客は釣りのついでにトマトを買って帰るのであり、トマトのついでに釣りをするのではない。この辺を理解して欲しい。

最後に、治水との兼ね合いももちろん重要。人間が住む以上、治水は必要不可欠で、どんどん進めるべき。その
上で魚にとっての環境を考えればよい。
当日会場のもよう。周知期間が短いこともあり、来場者は35名にとどまりました。下呂市を含む、馬瀬地域外からの聴講が多かったです。住民、漁協関係者、釣り人といった方々が見られました。